IoT無線について
ものをインターネットにつなぐ技術として、無線ネットワークが多く利用されています。ネットワーク技術を距離で分類したものが次の図です。近距離用のPAN、構内用のLAN、ひとつの都市や町程度をカバーするMAN、広いエリアをカバーするWANがあります。ただし、明確に定義された分類ではないため、それぞれの境界は厳密ではありません。
IoTの代表的な使い方として、環境のモニタリング、ガスや水道のメーターなど、分散して設置されたセンサーのデータ収集があります。これらの用途では、大量の接続が求められるため、低コストであることや、長期間使えるような低消費電力などに対応した通信技術が求められます。
こうした要件に対応した技術が、LPWA(Low Power Wide Area: 低電力広域ネットワーク)です。LPWAの通信速度は3G/LTE等のモバイルネットワークと比べ低速ですが、一般的な電池で数年から数十年にわたり運用可能な省電力性や、数kmから数十kmもの通信が可能な広域性を有しています。現在の代表的なLPWAのネットワークには、SIGFOXとLoRaWANがあり、日本でも既にサービスが提供されています。
SIGFOXとLoRaWAN
SIGFOXは、フランスのSigfox社により開発された独自規格のLPWAです。通信速度はおよそ100bps、通信距離は最大50kmくらいです。デバイスからクラウドへの通信(上り)のみに対応しています。利用料金は、デバイスの1日の通信回数と回線契約数により変動しますが、1回線あたり年間100円〜1,000円程度、月額換算すると8円〜80円となり、破格の安さが特徴です。現在、日本を含む51カ国でネットワークの構築・運用が行われています。ネットワーク事業者はSIGFOX Operatorと呼ばれ、1国につき1事業者が原則で、日本では京セラコミュニケーションシステムが事業者になっています(参考: https://www.sigfox.com/en/coverage)。
LoRaWANは、標準化推進団体である「LoRa Alliance」でオープンに策定されています。通信速度は距離とのトレードオフにより1〜50kbps程度、通信距離は5〜15kmくらいです。上り/下りの双方向の通信に対応しています。デバイスとネットワークはゲートウェイを介して接続します。ゲートウェイは、3G/LTEといったモバイルネットワークに接続できるため、SIGFOXがカバーしていない山間部などでも利用できるのが特徴です。また、オープンな技術仕様を活用してさまざまなサービスが提供される可能性もあります。
LoRaWANの利用料金は、ゲートウェイとIoTプラットフォームの利用料の合計です。例えば、「SORACOM Air for LoRaWAN」では、ゲートウェイ5台、デバイス1000台の場合、1デバイスあたり月額330円程度と、SIGFOXほどではありませんが、トータルで考えれば比較的低コストで利用することができます。
活用事例
次の表は、SIGFOXとLoRaWANの代表的な活用事例です。
出所: 情報通信白書平成29年版(総務省)
その他、火災報知機、ホームセキュリティ、見守り端末、ペットモニタリングといった導入事例もあります。無線は直接目にふれることがないため、IoTをよりパワフルにするために、縁の下の力持ちとして活躍しています。
おわりに
LPWAには、その他NB-IoTという規格もあります。既存のLTE基地局をそのまま利用できることから、早期に全国規模をカバーできると期待されています。先行しているSIGFOXやLoRaWANが当面は市場を牽引し、その後NB-IoTに対応した製品や通信事業者によるネットワーク対応が徐々に進むことが予想されます。IoTを支える無線技術、今後ますます目を離せません。