リモートワークをはじめとしたワーキングスタイルの多様化にともない、社内資料を自宅や外出先から扱いたいというニーズが高まっています。このようなニーズには、オンラインストレージを導入するのが便利ですが、どの製品を、どのように導入すればよいか、悩んでいる方は多いと思います。
この記事では、オンラインストレージ「NextCloud」について説明し、そのメリットやデメリット、導入方法などについて、簡単に説明します。
Nextcloudとは
「NextCloud」とは、高機能なオープンソースのオンラインストレージです。
クラウド上のオンラインストレージサービスと異なり、自社のデータセンターに導入することができるため、自社のセキュリティポリシーや運用ルールに準じて、柔軟な運用が可能です。
また、単なるファイル共有機能だけでなく、カレンダー機能や連絡先など、グループワークに必要な機能も搭載しています。
オンラインストレージを導入したいが、クラウドサービスではセキュリティや可用性に不安がある場合には、自社の環境に導入可能な「NextCloud」は、ぴったりのソリューションかもしれません。
NextcloudとownCloudとの違い
「ownCloud」は、NextCloudとよく比較されるオープンソースのオンラインストレージです。
NextCloudはもともと、ownCloudからフォークされて生まれた製品です。
そのため、NextCloudとownCloudは多くの共通点を持ちます。
ownCloudでは、すべての機能を利用するには、商用の「ownCloud Enterprise」を購入する必要があります。
無料の「ownCloud Community」では、監査ログやファイルアクセス制御、ケルベロス認証のサポートなど、一部の機能が制限されています。
それに対してNextCloudでは、すべての機能を無料で利用できます。
また、ビデオチャットやカレンダー、連絡先の統合など、ownCloudにはない機能も利用できます。
Nextcloudのメリット
自社環境に構築可能なオンラインストレージNextCloudには、以下のメリットがあります。
- 柔軟で高機能なファイル共有機能
- セキュリティ
- グループウェア機能(カレンダー、連絡先の共有)
- プラグインによる機能追加
柔軟で高機能なファイル共有機能
NextCloudでは、ファイル共有を柔軟に行うことができます。
外部とのファイル共有
連絡先の統合により、NextCloudに保存したデータを、組織外のユーザーと簡単かつ安全に共有できます。
ファイルを送信したい相手に対して、ファイルへの適切なアクセス許可を付与することができ、いつでもアクセス権の変更や停止ができます。
既存のストレージサービスとの連携
Windowsのファイル共有やFTPサーバーなどの既存のファイルストレージや、Amazon AWSのS3やDropboxなど、外部のストレージサービスと連係することもできます。
マルチデバイス対応
NextCloudでは、WindowsやMac OS、Linux用にデスクトップクライアントアプリが用意されています。
その他、PCでのWebブラウザーやスマートフォンのアプリなど、ユーザーの利用環境にあわせ、さまざまな方法でNextCloud にアクセスできます。
ストレージを拡張可能
NextCloudでは、必要に応じてストレージを拡張可能です。
商用クラウドサービスでは、ファイル容量に応じて料金が追加される場合があります。
NextCloudでは、自前でハードディスクやストレージサーバーを調達し、追加すればよいので、それ以上の費用を支払う必要はありません。
セキュリティ
高いセキュリティを確保できることが、NextCloudの大きなメリットです。
適切なアクセス権の付与
ファイルに対してアクセス権を付与して、外部に共有できます。
共有先に応じて適切にアクセス権を設定することで、情報漏えいやメールの誤配信などの問題を回避できます。
また、共有時にパスワードを設定したり、共有期限を設定したりできます。
PPAP(メールに書類を添付し、パスワードを別のメールで送信する方法)対策として有効です。
自社のインフラ環境
自社の環境で構築、運用できることも、セキュリティ上の大きなメリットです。
自社のセキュリティポリシーに合わせて、セキュリティの設定を柔軟に行えます。
なにより、大事なデータを自社でコントロールできる環境にあるということで、大きな安心感を得ることができます。
グループウェア機能(カレンダー、連絡先の共有)
NextCloudにはグループウェア機能が統合されているため、単なるファイル共有サービスとしてだけでなく、社内、社外を含めたコラボレーションツールとして活用できます。
共有カレンダー
NextCloudのカレンダー機能を利用すると、社内だけでなく、社外のメンバーとも予定を共有できます。
また、ThunderbirdなどのCalDAVクライアントと連携できるほか、Googleカレンダーなどの外部カレンダーを利用できます。
連絡先の共有
NextCloudとスマートフォンなどのモバイルデバイスとで、連絡先を同期できます。
コラボレーション
NextCloud では、ビデオ会議や、画面共有など、グループでのコラボレーションに便利な機能を搭載しているため、業務効率が向上します。
エンタープライズ向け機能
NextCloudでは、ロギングなどの監査機能、ディレクトリサーバーとの連携やシングルサインオンなど、エンタープライズ向け機能にも対応しています。
プラグインによる機能追加
NextCloudに標準で搭載されている機能のほかにも、プラグインによって機能を追加することができます。
標準機能では物足りない機能をプラグインで補完したり、ワークフローに合わせて作業を自動化したりして、業務効率をアップできます。
Nextcloudのデメリット
もちろん、NextCloudはメリットだけではありません。
クラウドサービスのオンラインストレージと比べると、いくつか解決すべき課題があります。
- セットアップと構成が複雑
- パフォーマンスの懸念
- セキュリティの懸念
- サポートの限界
セットアップと構成が複雑
NextCloudは、データベースやウェブサーバーなど複数のミドルウエアと連携して動作するため、セットアップと設定が複雑になります。
外部公開のためのネットワーク設定やセキュリティの設定はもちろんのこと、OSのインストール、データベースやウェブサーバーの設定、PHPランタイムの導入など、NextCloudをインストールする以前にもやるべきことはたくさんあります。
クラウド上の商用サービスならば、ユーザー登録を済ませれば、すぐにサービスを利用できます。
NextCloudでは自社の状況に合わせて柔軟に構築できる分、自社で作業する必要があります。
パフォーマンスの懸念
NextCloudを自社の環境で運用する場合は、パフォーマンスの問題にも気を配る必要があります。
商用のクラウドサービスならば、ロードバランシングによる負荷分散や、クラスター化などによる耐障害性の確保など、パフォーマンス上の対策はすでに講じられています。
自社環境でNextCloudを構築する場合は、場合によっては、これらの対策を自社で検討する必要があるでしょう。
セキュリティの懸念
NextCloudを自社環境に構築し、外部のネットワークに公開して使用する場合には、セキュリティの設定も自社で行う必要があります。
サポートの限界
NextCloudはオープンソースなので、コミュニティーによるサポートが主体です。
日本国内では、株式会社スタイルズがサポートを提供していますが、有償になります。
Nextcloudの導入方法
NextCloudを導入するには、主に以下の2つの方法があります。
- 自社の設備に、自分でNextCloudをインストールする
- すでにNextCloudがインストールされているサーバーを利用する(おすすめ)
自社の設備に、自分でNextCloudをインストールする
NextCloudを自社環境に導入する場合、基本的には自社のデータセンターやサーバーにNextCloudを導入します。
組織によって異なりますが、おおむね以下の作業を、すべて自社で行うことになります。
- 1. ユーザー要件のヒアリング、システム設計、ネットワーク設計など
- 2. サーバー、ネットワーク関連機器、ストレージなどのハードウェアを調達
- 3. サーバーOSのインストール
- 4. サーバーのネットワーク設定、セキュリティ設定
- 5. ミドルウエア(データベース、ウェブサーバーなど)のインストールと設定
- 6. NextCloudのインストール
- 7. NextCloudの動作確認、各種設定
システム要件
NextCloudをインストールするサーバーの推奨システム要件は、以下の通りです(2023年9月25日時点)。
Red Hat Enterprise Linux 8 | Ubuntu 22.04 LT |
---|---|
ウェブサーバー | Apache 2.4 with PHP-FPM or mod_php Nginx with PHP-FPM |
PHPランタイム | PHP 8.0-8.2 |
データベース | MariaDB 10.4~10.6 MySQL 8.0以降 PostgreSQL 10~15 |
すでにNextCloudがインストールされているサーバーを利用する(おすすめ)
自分でサーバーを構築するのが面倒な場合は、すでにNextCloudがインストールされているサーバーを利用するのも良いでしょう。NextCloudの運用ルールの検討や、セキュリティ設定などに注力できます。
GMOクラウドALTUSでは、すでにNextCloudがインストールされたOSテンプレートが、14日間無料で利用可能です。
また、本格的な設定を代行してくれるメニューもありますので、導入コストを抑えたい法人でのご利用にもおすすめです。
まとめ
オープンソースのファイルストレージである「NextCloud」を導入すると、自社のニーズに合わせて高機能かつ柔軟なファイル共有を行えます。
また、拡張可能なグループウェア機能により、単なるファイル共有にとどまらず、社内、社外を含めたコラボレーションツールとして活用できます。
ただし、商用のクラウドストレージサービスと比べると、すべての設定を自社のスタッフで行う必要があるため、場合によっては時間とコストがかかります。導入時のコストを抑えつつ、NextCloudをすぐに利用したい場合には、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する国産クラウド「GMOクラウド ALTUS(https://altus.gmocloud.com/)」を導入することをお勧めします。NextCloudがインストールされたOSテンプレートを、14日間無料で利用できます。
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- 監修
- 当記事は、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社のITエンジニアによって監修されています。