CentOS ProjectがCentOS Linux 8を2021年末に終了するという発表を行ってからCentOS Linux 8の代替OSを探している方も多いと思います。
現在、CentOS Linux 8の代替を目指してAlmaLinuxやRocky Linuxなど新しいRed Hat Enterprise Linux(RHEL)クローンの開発が進んでいますが、既存のRHELクローンの中にもCentOS Linuxの替わりとなるもの存在します。
今回は、そんな既存のRHELクローンの中の有力候補であるOracle Linuxについて紹介します。
なお、CentOS Linuxが終了する問題についての詳細については下記の過去記事にて紹介していますので、合わせて参考にしていただければと思います。
≫CentOS Linux 8のEOL問題と今後の対策について
≫CentOS Linux 8の代替OS候補!AlmaLinuxをご紹介!
・Oracle Linuxとは
・Oracle Linux とその他OSの違い
・Oracle Linuxの入手とインストールについて
・Oracle Linuxへの移行ツールについて
・Oracle Linuxの総評
・最後に
Oracle Linuxとは
Oracle Linuxは、データベース製品などで有名なOracle社が自社の製品群の動作基盤として整備しているRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をベースとしたLinuxディストリビューションです。
Oracle Linuxは、2006年からRHELを追随する形でリリースされ続け、高い信頼性が求められるデータベースなどの動作基盤としての実績があります。
Oracle Linuxの特徴
Oracle Linuxの主な特徴は以下の通りです。
* 無償利用可能なRHELクローン
* RHELと同等の期間アップデートを利用可能(Oracle Linux 8は2029年7月)
* 既にリリース済みで実績がある
* 利用中のCentOS Linux環境からOracle Linuxに切り替えるツールを提供
* 有償サポートを契約可能で、延長サポートにより2029年以降のサポートも可能
* カーネルがRHELと異なり、より新しいLinuxカーネルをベースにしている(RHELと同様のカーネルも同梱)
無償利用の場合はOracle社への問い合わせやテクニカルサポートは受けられませんが、CentOS Linuxもこれらは受けられないので、CentOS Linuxの代替としては問題ないと考えます。
また、CentOS LinuxからOracle Linuxに切り替えるツールも存在するため既存のCentOS Linuxユーザーにも選択しやすいディストリビューションとなります。
更に、既にリリースされているため一部のサードパーティー製の製品ではサポートされているという点は、現在開発段階にあるAlmaLinuxやRocky Linuxと比較して強みになります。
Oracle Linux の有償サポートの特徴
Oracle Linuxは
Oracle社と有償サポートを契約することにより、24時間サポートを受けたり、ULN(Unbreakable Linux Network)を経由してさまざまなツールの利用やいち早いパッチのダウンロードなどが可能になります。
有償サポートの中には、通常サポートより長い期間パッチ提供を受けられるExtend Supportや、リリース済みパッチの提供やテクニカルサポートが無期限に受けられるSustaining Supportもあるため、長期間安定した環境を維持することも可能です。
また、Oracle Linuxだけでなく、RHELやCentOSもサポート可能な契約もあるため、複数のOSを利用している場合は、サポートを一元化できる点もメリットと言えます。
Oracle Linux とその他OSの違い
Oracle Linuxには、RHELやCentOS Linuxとは異なる点もあります。
代表的なものとして、Linux OSの中心となるLinuxカーネルがRHELのものと異なる点があげられます。
Oracle Linuxのカーネルは、UEK(Unbreakable Enterprise Kernel)と呼ばれるもので、RHELやCentOS Linuxより新しいLinuxカーネルを元にOracle製品のパフォーマンスを発揮するためのカスタマイズが行われています。
通常、ユーザーがカーネルを意識することはありませんし、UEKはRHELのものとAPI互換があるので問題はなく、むしろ新しいだけに機能も増え、Oracle製品の動作環境として高パフォーマンス・高安定性の実績がある点でメリットが大きいものです。
しかし、徹底的に性能チューニングを行ったりカーネルやデバイスドライバを直接操作するような一部のユーザーにとっては、CentOS Linuxの代替として利用する際にはカーネルが違うことを意識する必要があるかもしれません。
なお、Oracle Linuxは、RHELで利用されているカーネルも同梱しておりRHCK(Red Hat Compatible Kernel)と呼ばれています。
ユーザーはRHCKを使ってOSを起動することも可能です。
それ以外の独自要素の多くは、有償サポート時の追加機能なのでCentOS Linuxの代替としては問題ないでしょう。
以上、多少RHELやCentOS Linuxと異なる点はありますが、多くのユーザーには問題はありません。
Oracle LinuxはCentOS Linuxの代替として同等以上に利用できる製品ですので、代替OSとしては、不足なしと言えると思います。
Oracle Linuxの入手とインストールについて
Oracle Linuxのイメージファイルは、公式サイトの「Download Oracle Linux」から「Oracle Linux Installation Media for x86_64 and Arm」を選択することで一覧を確認できます。
現在の最新版はOracle Linux 8.3になっていますので、これをダウンロードします。
Oracle Linuxのインストール手順は、CentOS Linux 8と同じです。RHEL8やCentOS Linux8のインストール経験があれば問題なくインストールできます。
インストールが終われば、CentOS Linux 8と同様に利用することができます。
RHELクローンであるため当然ではありますが、CentOS Linuxとの実用上の違いはありません。
各ツールもRHELやCentOS Linuxに準じたバージョンが使われています。
カーネルについてはUEKが5.4系のカーネル、RHCKが4.6系のカーネルとなっていて、デフォルトではUEKで起動しています。
有償サポート契約を結びULN(Unbreakable Linux Network)を利用する場合は、アプリケーションの一覧から「ULN Registration」を選択しアカウント情報や契約情報を登録します。
これはGUIを利用していない場合は、コマンドでも可能です。ULNの詳細についてはOracle Linuxのドキュメントを参照してください。
以上でセットアップは終わりです。
CentOS Linux 8からOracle Linuxへの切り替えツールについて
CentOS LinuxからOracle Linuxに切り替える方法が、こちらのブログで公開されています。 このツールの詳細についてはGithubリポジトリのREADMEを参照してください。
このツールは、AlmaLinuxの切り替えツールなどと同様にyum(dnf)のリポジトリをCentOS LinuxからOralceLinuxに書き換えることで、CentOS Linuxの環境で今後はOracle Linuxの更新パッケージを受けとれるようにします。
ただし、リポジトリの切り替えだけでなく、パッケージで再インストールなども行われ最後にリブートも必要となるため、ダウンタイムなしでは切り替えができません。
なお、CentOS LinuxからOracle Linuxへの切り替えは同じバージョン間でしか行えません。(例: CentOS Linux 8 → Oracle Linux 8) 注意点としては切り替えツールは全ての環境で切り替えができることを保証するものではなく利用も自己責任となります。
このため、基本的には切り替えるのではなく新規に環境を構築することをお勧めします。 利用する場合は、環境を大きく変更するツールのため、事前に十分検証したあとバックアップを取ってからご利用ください。
特にサードパーティー製のソフトウェアをご利用の場合は、そのソフトウェアのサポート条件や切り替えだけで利用できるかなどを事前に確認する必要がありますのでご注意ください。
システムの移行には事前の検証などは必要ではありますが、終了を迎えるCentOS Linuxのユーザーが現在の環境をOracle Linuxに移行する手段があることは、Oracle Linuxを選択する理由の一つになるかと考えます。
Oracle Linuxの総評
Oracle Linuxは、歴史も長くデータベースなどの信頼性が求められるシステムで利用され続けている実績もあり、CentOS Linuxを除いた既存のRHELクローンの中では恐らく最も知名度が高いディストリビューションです。
パッケージや操作体系などもRHELに準じるためCentOS Linuxの代替として大多数のユーザーには問題なく利用できます。
一方、Oracle製品に対してカスタマイズされた点が少なからずあるため、RHELとの差がないことを重視するユーザーには好まれないかもしれません。このようなユーザーには今後リリースされるAlmaLinuxやRocky Linuxの方が適していると思います。
AlmaLinuxやRocky Linuxは未だ開発中とは言え、RHELを元にしているため一定の品質は期待できます。
このため、現時点では、Oracle Linuxは以下のようなケースではおすすめできるのではないかと考えます。
* 実績のあるディストリビューションを使いたい。
* 利用を検討している監視などのサードパーティー製品がOracle Linuxをサポートしている。
* RHELと同じ操作体系・パッケージが使えることを重視し、裏で動くカーネル・ドライバの直接の操作は行わない。
* 有償サポートを受けたい。
* Oracle製品を利用したい。
上記に当てはまらない場合は、AlmaLinuxやRocky Linuxがリリースされた後にOracle Linuxも含めてどのディストリビューションが人気かを確認してから選定するのがおすすめです。
最後に
CentOS Linuxの終了問題については、弊社もCentOS Linux代替ディストリビューションの準備を進めています。
その第一弾としてALTUS by GMOにおいて、AlmaLinuxとOracle Linuxが利用可能となりました。
他の弊社サービスについても、なるべく早くお客さまに代替ディストリビューションを利用していただけるよう準備を進めていますので、今しばらくお待ちください。
【2021/10/13追記】----
既に以下のサービスでAlmaLinuxやRocky Linuxなどが利用可能です。
※Rocky Linuxは一部サービスのみ提供済み
・ALTUS byGMO
・クラウドVPS byGMO
・GMOクラウド 専用サーバー
・GMOクラウド Private
・WADAXおたすけクラウドサーバー
・WADAX専用サーバー
ALTUS byGMOではCentOS Stream及びOracle Linuxも利用可能です。
また、高性能なサーバー管理ツールPleskについても、多くのサービスにおいてAlmaLinuxで利用可能です。
ぜひご活用ください。
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なお、CentOS Linuxの代替として、どのディストリビューションが主流になるかの動向が見えてくるまでは、まだしばらく時間がかかると思います。
CentOSをご利用中の皆さまには2021年末までの移行を念頭に今しばらくは情報収集や検討を行っていただくようお願いいたします。
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