2016.02.15

社内メールをIMAPにするには?メリットとデメリットを正しく理解しよう

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技術ナレッジ
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メールサーバー

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Ⅰ.IMAPで目指すWin-Winの形とは?

こんにちは。フリーエンジニアの木下です。

今回はシステム管理者から見たIMAP活用のための知識として、その特徴と社内に展開する際のポイントをご紹介します。
IMAPが利用できるiCLUSTAでは、スマホ(タブレット)とPCの両方ないし複数台のPCで同一のメール環境を参照する、という利用方法を採用できます。ただしIMAPはサーバーに蓄積されるからこそIMAPユーザーの全メールデータがサーバーに蓄積される、という点についてシステム管理者は考慮しなければならない事項が存在します。
まずは、あなたの会社内のメール環境において以下の2つの要件のいずれかに該当するかどうか確認してみてください。該当するようでしたらIMAPを利用してスマホとPCの両方でメールサービスを社内に展開することで大きくメリットを享受できます。

1. IMAP全面移行

スマホで閲覧したメールはPCで閲覧した時に既読になっていてほしい。また送信メールもデバイスを問わず参照できるようにしたい、というユーザーの要望が満たせます。

2. IMAP一部利用

新着メールはデバイスを問わず受信し確認できるようにしたい。PCのメールもスマホのプッシュ型でメールを受信したい、というユーザーの要望が満たせます。

IMAP全面移行が理想ですが、当方では、「(2)IMAP一部利用」を採用し、新着メールをスマホで閲覧し後でPCでも受信、という環境を展開し実際に運用しています。
理由は後述します。まずはそれぞれの方法を深掘りします。


Ⅱ.IMAP全面移行を採用する場合

どこでも、どのデバイスでも同一のメール環境が利用できるようにするためにはIMAPの全面移行は不可欠です。スコープが新着メールの受信のみならず送信メールやフォルダ振り分けルールなどのメール環境全般であればIMAP全面移行が解決策となります。
どこでも閲覧できるようにする場合には利用中のユーザーデバイスのすべてのメーラー(OutlookやWindows Liveメールなど)設定を、IMAPによるメール設定に変更します。IMAPの設定は「GMOクラウド iCLUSTAシリーズ 活用ガイド」内の「メーラーの設定」ページに詳しく記載がありますのでご覧ください。
この場合にユーザーは複数のデバイスで実行したメールアクションが共通して反映されるメリットを享受できます。Webメールやメール転送ではこの「送信メールをデバイス間で共通化する」ということが実現できませんがIMAPはそれを実現可能にします。また、普段利用しているPCが故障などで利用不能になったとしても、別のPCでメール設定を実行することでメール環境が復元可能なことが大きなメリットです。
このようにIMAPを採用することでデバイスを選ばずメール環境が利用できますしデバイス故障時の備えをすることにもなります。

ユーザー数が少ないか1人当たりのメール利用量が少ない環境であれば、IMAPに全面移行がお勧めです。
ただしこの方法には、システム管理者にとってデメリットとなる落とし穴も存在します。

メールサーバーにはディスク容量という制限があります。iCLUSTAレギュラープランでは40GB、プロプランでは60GBという容量の上限が制限値となっています。すべてのユーザーでこの容量を分け合いますので、例えばレギュラープランを契約している組織で、1人4GBのメールをため込むユーザーが10人いる場合では、メールが組織全体でダウンしてしまう事態に発展します。
よって容量をため込むユーザーが多い組織やそもそもユーザー数が多い組織においては、すべてをIMAPに切り替えるのは将来にリスクを抱えることになってしまう可能性があります。


Ⅲ.IMAP一部利用を採用する場合

ではユーザーが多い組織やメール受信量が多い組織はIMAPでスマホとPCのメールを便利に使えないの?と疑問がわいてきます。
そこで、お勧めしたいのが、IMAPとPOP形式の両方を利用するハイブリッド型のメール受信です。
「新着メールはスマホで閲覧しPCでも受信するが、スマホ側は直近の新着受信メールだけ確認する」方法です。この方法は、スマホのみIMAPでメール操作をし、PCはPOP受信でメールを取得してしまいます。
これならば、POPで定期的にメールサーバー上の古いメールを削除(PCに複製)することになりますので、メールサーバー上には新着受信メールだけを残すようになり、サーバーの容量制限をクリアできる可能性が高くなります。
ただしIMAP全面移行で享受できる以下のメリットの恩恵は受けられない、という点がハイブリッド型のデメリットとなります。
 

  1. 送信メールをデバイス間で共通化できません。(スマホで送信するとスマホにしか送信メールは残りません。スマホからPCで送信したメールを閲覧することもできません。)
  2. PCが利用不能になってしまった場合、メールデータはサーバー上に残されている○日分しか利用できません。PCで受信したメールデータはPCから取り出す必要があります。
  3. スマホ上でメールを未読にしておいても、設定したサーバー残存期間○日経過後のメールはPCで参照する必要があり、スマホで見ることはできません。

この3つの要件がどうしても必要な場合にはメールサーバーの容量増加とともにIMAP全面移行を実施する必要があります。


Ⅳ.IMAP一部利用で考慮すること

IMAP一部利用であるハイブリッド型の使い方では「スマホは新着メールの閲覧用」「PCでメールの基本操作を実行」と割り切って役割分担をします。
これを実現するにあたり、以下の2種類の考え方がありますので、ご自身のユーザーとご相談のうえ方針を決定されることをお勧めします。

1. 外出時(PCなし)はスマホでIMAP接続し新着メールのみ確認する

PCでPOP受信後はIMAP形式のメールは閲覧できない(メールボックスから削除される)

常に新着はスマホで確認可能で、PCにて受信してしまうと空っぽになるパターンで

(ア) メリット:PC側の設定変更が不要、スマホだけ設定でOK。
(イ) デメリット:過去のメールは必ずPCで見る必要がある。

このデメリットをカバーする方法が次の方法です。

2. 時限式で削除する

例えば14日間経過後IMAPで閲覧できるメールは自動削除、という具合に、直近のメールだけをIMAP形式でアクセス許可するパターンです。
この場合、POP受信時にサーバーに複製を残すようメーラー(Outlook2010)で設定をしてやる必要があります。

(ア) メリット:PCで受信後もIMAPで一定期間の過去メールが閲覧可能。
(イ) デメリット:メーラー設定の追加設定がPC1台1台に必要な場合がある。

ここで疑問なのが「メールサーバーに数日間だけメールを残すことはできるのか?」という点です。

これはサーバー単体の機能では実現できないのですが、メーラー次第で可能です。例えばOutlook2010/2013ならば設定にて「サーバーにメッセージのコピーを置く」設定を有効にし、「サーバーから削除する:?日後」を設定してやることで可能です。
実際の設定を見てみましょう。PCのメーラー設定ではPOP形式でのメール設定を実行しますが、一つ追加設定として以下を実行します。(※ここでは例としてOutlookで解説します。)

  • 「サーバーにメッセージのコピーを置く」設定を有効にし、
  • 「サーバーから削除する=○日後」の設定をあわせて有効化します。

※なおこの設定はOutlookのデフォルトなので、設定を確認した結果、既に設定が有効かもしれません。
※この図の例ではPCで受信したメールの複製は14日経過したのちサーバーから削除されます。

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この2つの設定が有効化されていることで、PCで受信したメールはサーバー上に残ることになります。サーバー上に残っている限りは、IMAP形式で閲覧が可能ですのでスマホから直近○日分のメールは閲覧が可能です。
しかし、あらかじめ指定した○日を経過したメールはPCのメーラーの機能でメールサーバー上から(ユーザーが意識することなく)自動的に削除されます。
削除されたメールはなくなってしまうの?と不安になった方、安心してください。

サーバー上から削除されてもPCのメーラーにメールデータは残りますので、スマホで閲覧できなくなるだけです。
この環境の1番の利点は、「一定期間のメールしかサーバーに蓄積されないので、サーバー上のHDD容量の上限は、1ユーザーの1日のメールデータ容量×○日分×スマホユーザー数=必要な容量」となることです。
これによって、サーバー上へは○日分のメールデータしか残存しないため、未来永劫メールデータが残存することでサーバーのディスク容量を圧迫する、という事態は回避できます。

システム管理側にとってもIMAPはかなりの利便性をもたらしてくれます。

ぜひ、使えそうなところからIMAPを使い始めてみるのはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

木下肇

東京/神奈川を中心に、都内中堅企業ではシステム部門の一員として部内インフラ業務に、別の小規模企業ではインフラ全般について管理業務の委託を受けるフリーエンジニア。オンプレミスの企業内インフラからクラウド環境のサーバ/ネットワークまで、OS守備範囲はWindowsからLinuxまで、障害の診断や修復/修理であればソフトからハードまで、幅広い守備範囲で日々お客様の業務を遂行しています。
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