【利用シーン】SSDが購入候補にあがったとき
こんにちは、金山です。
この連載は、ITエンジニアと話す機会のあるエンジニア以外の方へ向けて書いています。目的は、IT技術的な用語を出来る限り噛み砕いて説明していくことです。忙しく働いている方々が短い学習時間で、知識を身につけられるように説明していければと思います。
- 連載『忙しい非エンジニアのための技術解説』のほかの記事はこちら
第1回:サーバーとは? - 第2回:サーバーの構成は?
- 第3回:サーバーのハードウェア構成は?
- 第4回:OSってどんなのがあるの?
- 第5回:この記事
【第5回】
今回は、コンピューターを構成する部品の中でも、ストレージと呼ばれているHDDとSSDの比較をしてみたいと思います。この連載のなかではディスクと呼んでいた部品ですね。数年前まではHDDばかりだったのですが、最近ではSSDの搭載されたパソコンも一般的ですので、パソコンを購入しようかなっていう時にも選択肢にあがることでしょう。
とは思うのですが、実際HDD搭載パソコンと比較すると、容量に対して値段が高いですね、SSD。もちろんサーバーでもSSDが使えますので、仕事上でサーバーを調達しようかというときには、性能比較でSSDが出てくることもあるでしょう。
ちなみに、容量1GBあたりの単価を、「容量単価(GB単価)」と呼びます。略してギガ単。1,000GBのHDDが10,000円だったら、ギガ単10円ですね。ギガ単いくらよ?みたいな会話します。つまり、今回の話を言い換えてみると、「SSDはHDDよりもギガ単が割高なのはなぜか?」になります。
本題に戻って、なぜ割高かといえば、容量以外のところが優れているから高価格でもSSDが候補にあがるのです。今回の記事では、HDDとSSDそれぞれの構造の違いを見ていくことで、2つの性能の違いがどこに現れるのかを説明していきます。
1.HDDの構造
まずHDDの構造を見てみましょう。
HDD=ハード・ディスク・ドライブ の略です。名前のとおり、円盤状のディスクが何枚か格納されています。裏からみて、下半分のあたりです。
イメージとしては、レコードでしょう。真ん中にレコードディスクを回転させる部品があり、レコードディスクが回転します。そしてレコードディスクの上には、1箇所読書きを行うための部品があります。これはCDでもDVDでも同じで、円盤のほうが回って、読書きをする部品の上を通ることでデータを取り扱います。
ハードディスクでは、裏面画像の下半分のあたりにディスクが収められています。ディスクは複数枚が、触れ合わないように重なって入っており、その間に読書きをするための部品が入っています。ハードディスクは表裏どちらもデータを扱えるので、読書き部分がディスクをはさむようになっています。
2.HDDの特徴
ここまでの構造の話を踏まえて、HDDの特徴をまとめてみます。
①大容量で安価
ここはSSDと比較するならになってしまいますが、HDDはディスクの部分が安いです。パーツが安ければ、全体としての価格も下がります。また、HDD自体歴史が長く普及していることもあり、価格が抑えられている傾向があります。容量に関していえば、HDDは4TB(4000GB)といった大容量のものも存在します。
②読書きに時間がかかる
例えば読み込みたいデータが、読み込むパーツから近ければすぐ読み込みます。逆に遠ければ読込開始するまでに待ち時間が発生します。1回1回は人間にとって知覚できるほどの時間ではありませんが、積み重なると大きな時間となります。そしてHDDの読書き速度は、ディスクの回転に依存しています。コンピューターはデータを電気信号のやり取りで動いていますが、物理的な動きは、電気の速度にはかないません。ディスクの回転という物理的な動きに、コンピューター全体が引きずられることになります。
③衝撃に弱い
ディスクが回転しているので、回転中に動かすとディスクを傷つけてしまったり、ゆがんでしまったりして、壊れてしまいます。サーバーやデスクトップではそこまで重要ではありませんが、持ち歩くノートパソコンでは気をつけましょう。
④動作音が大きい
ディスクが高速回転していますので、稼動に伴って音が発生します。とはいえサーバーでしたらあまり気にするところではありませんね。パソコンでもHDDの回転音以上に、CPUを冷やすためのファン音のほうが騒音であることが多いというのが個人の感想です。
余談ですが、ガリ...ガリガリ...という音がしてきたら気をつけましょう。壊れる前兆かもしれません・・・。
⑤寿命は動作部故障が多い
言うまでもなく、全ての機械はいつか必ず壊れます。さらに、壊れる可能性は物理的に動くことで上がる傾向にあります。HDDの場合はその構造上よく動くため、部品が壊れることで寿命を迎えることが多いようです。稼動部が故障してしまうことによりディスクとデータのやり取りが行えなくなったときに、寿命を迎えます。
3.SSDの構造
SSDの構造について、説明します。
SSDは、フラッシュメモリといわれるパーツにデータを読み書きします。画像の中では、①の部分です。同じような見た目のパーツがいくつかありますが、これらすべてがフラッシュメモリです。SSDの容量は、このフラッシュメモリひとつひとつの容量と、いくつ搭載されているかの数によって決まります。
フラッシュメモリという単語は聞いたことがある方も多いと思います。USBメモリの中に入っていますね。 そこで、まずはSSDとUSBメモリの違いを見てみましょう。
USBメモリとSSDは同じようにフラッシュメモリを使っていても、利用目的が違います。SSDはHDDの代わりとなるものとして製造されていますので、OSなどの重要なソフトウエアが入ることも想定されています。そのため、利用しているフラッシュメモリ自体もUSBメモリで使われているものより良いものが使われていると思われます。これは値段相応というところでしょう。
さらに違いは、②の部品の性能によって生じます。この部品は、コントローラーと呼ばれています。名前のとおり、データの読み書きをコントロールしている部分です。例えばいくつかあるフラッシュメモリのどれにデータを書き込んでいくか、のような制御を行っています。そのため、SSDの性能はこの部分によって大きく左右されています。ここもUSBメモリに組み込まれているコントローラーとは大きく性能と価格が違うでしょう。とはいえコントローラーに関しては、重要な箇所ではありますが、SSDを単体で購入するような場合に気にするところです。
そしてSSDは、USBではない場所でコンピューターに接続されています。普段コンピューターを利用していて見かける形状ではありませんが、③の部分がコンピューターへ差し込む部分です。
SSDの構造は、このようにコントローラーによって、フラッシュメモリとデータのやり取りを行うというものです。
4.SSDの特徴
今まで見てきた構造と、世の中の現状を踏まえて、SSDの特徴を見ていきましょう。
①容量に対して高価
この記事を書いている15/05/01時点で、インターネットで少し値段を調べてみました。
HDD:12,000円/2000GB → 6円/GB
SSD:12,000円/256GB → 46円/GB
8倍程度の価格差でした。しっかり探せばもっと安価なSSDも見つかるとは思いますが、価格差はほとんど埋まらないでしょう。
この数値はもちろん目安です。SSDが高価な理由は、まだまだ普及が進んでおらず、価格競争が起きにくい状況であると思われます。また、大容量化がようやく進んできていますが、大容量SSDはまだまだ高価で技術的な問題もあり、普及するには今後数年かかりそうです。
とはいえ、現在低価格化が進んでいます。ノートパソコンに搭載されていることが標準化するなどにより今後も普及が進めば、安価にSSDを購入・利用することが可能となりそうです。
②読み書きが高速
HDDと比較すると数十%以上の処理速度を発揮します(いずれ具体的な数値で比較した記事も掲載します)。前回のHDDの構造で触れましたが、物理的な回転が必要なHDDではデータの読書き速度に限界があります。しかし、SSDには稼働する箇所がありません。これにより、HDDと比較して、高速です。
高速だとどんな恩恵があるのか?ということがイメージしにくいかもしれません。わかりやすいところでは、パソコンの起動がかなり違います。なおYouTubeでは以下のような動画がアップされておりましたので、ひとつご紹介させていただきます。
SSD vs. HDD
出展:You Tube
他にも比較動画が大量にありますので、ご興味があれば探してみてください。パソコンの起動だけでなく、コンピューターで動作するさまざまなアプリケーションで、これぐらいの速度差が生まれます。
③動作が静かで振動に強い
ここはHDDでは弱みであった箇所です。ディスクが回転するという構造上、回転中に振動が加わることで、ゆがみや傷が生まれ、故障の可能性が大きく上がってしまいます。そして、可動による音の発生がありました。 SSDでは可動部分が無いため、この問題がありません。そのため、カーナビやノートパソコンではSSDが採用される大きな利点となっています。
④寿命は書き換え回数による
HDDは、物理的な故障が寿命となることが多いと書きました。SSDでは書き換え回数による寿命があると言われています。 フラッシュメモリには何回書き換えが行えるか、という回数が設定されています。その回数を超えることが寿命となります。SSDのコントローラーは、すべてのフラッシュメモリで均等に書き換えを行うようにもコントロールしています。
しかしSSDは、気にするほど短寿命ではありません。コンピューターの寿命自体が、3年から5年程度です。その間に寿命を迎えるような使い方は、意識して壊そうとしないと難しいです。機械はさまざまな理由で故障する可能性があるので、書き換え回数だけを気にする必要は無いと思います。
具体的な寿命は、それぞれの使い方によるため、何年で故障しますとは言えません。コンピューターというのは、いつ壊れるかわからないので、バックアップを取得しておくなどにより、もしもの事態に備えておくことが、サーバーを運用する方の責任ある仕事となります。
⑤消費電力が少ない
最後にSSDは、HDDと比較して消費電力が少なく済みます。電力の消費量が少なければバッテリーの消費を抑えられるため、ノートパソコンで利用する優位性が更に上がります。消費電力が少ないと温度の上昇も抑えられます。
そもそもの消費電力が少ないですが、起動などにかかる時間も短いので、節電において大きなメリットがあります。
3.SSDとHDDの違い
これまで述べてきたSSDとHDDの違いを比較してみましょう。
今までの特徴を比較表にするとこのようになります。
HDD | SSD | |
容量 | 大容量 | 容量少なめ |
価格(1GBあたりの単価) | 安価 | 高価 |
読み書き速度 | 低速 | 高速 |
耐衝撃性 | 弱い | 強い |
動音作 | 大きい | 静か |
寿命 | 動作部の故障による | 書き換え回数による寿命 |
消費電力 | 多め | 少なめ |
おわりに
これまでそれぞれの構造から、強みと弱みを見てきました。
重要な考え方は、「その強み・弱みは自分にとってどうか?」という視点だと思います。
自分の使い方にとって、容量と速度どちらが重要なのか?
といった視点から、それぞれの強みを考えて、使い分けられるといいですね。
技術者がサーバーを調達するときには、これらのことを考えているはずです。むしろもっと詳しく考えているはずですので、この記事のような知識をベースに話を聞いてみてください。
今回はここまで。お付き合いいただきありがとうございました。