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昨年末にCentOS Linux 8のサポートが終了してからしばらく経ちましたが、皆さま移行は終わりましたでしょうか?
GMOクラウドアカデミーでは、昨年にAlmaLinuxやRocky Linuxなど、いくつかのCentOS Linuxの代替となるディストリビューションの紹介を行ってきました。
今回は、まだ移行先を検討中の方を対象に、昨年秋に無償利用可能なライセンスフリー版が公開されたMIRACLE LINUX(読み方:ミラクル リナックス)を紹介します。
なお、CentOS Linuxが終了する問題についての詳細や他のディストリビューションについては下記の過去記事にて紹介していますので、合わせて参考にしていただければと思います。
- ≫CentOS Linux8のEOL問題と今後の対策について
- ≫CentOS Linux 8の代替OS候補!AlmaLinuxをご紹介!
- ≫CentOS Linux 8の代替OS候補!Rocky Linuxをご紹介!
- ≫CentOS Linux 8の代替OS候補!Oracle Linuxをご紹介!
- ≫CentOS Linux 8の代替OS候補!CentOS Streamをご紹介!
MIRACLE LINUX(ミラクルリナックス)とは
MIRACLE LINUXとは、サイバートラスト社が開発しているディストリビューションです。
サイバートラスト社は元々MIRALCE LINUXというブランド名でRHEL(Red Hat Enterprise Linux)をベースに有償のディストリビューションを提供していました。長期サポートの提供により、長期的な安定運用が求められる基幹システムや通信システム、業務専用機器への組み込みなどで広く使われています。
このサイバートラスト社が、CentOS Linux 8の終了を受けてCentOS Linuxと同様の無償利用可能な純粋なRHELクローンとしてライセンスフリー版MIRACLE LINUX(MIRACLE LINUX 8.4)を公開しました。
当記事において以降では無償利用可能なライセンスフリー版MIRACLE LINUX(以下、MIRACLE LINUX 8.4)に関してのみ説明します。
MIRACLE LINUXの特徴
MIRACLE LINUX 8.4は、純粋なRHELクローンのため、パッケージの種類やバージョンは基本的にAlmaLinuxやRockyLinuxなどのRHELクローンと同じです。このためCentOS Linuxを利用していたユーザーにとっては違和感なく利用できるディストリビューションとなっています。
一方、MIRACLE LINUX 8.4は、他のRHELクローンと比較すると以下のような特徴を持っています。
- ・最長12年のサポート期間(有償サポート時)
- ・国産ディストリビューション
- ・インストールメディアは偶数番のみ提供される
- ・コミュニティではなく、日本国内の企業が開発
サポート期間については、無償利用時は10年、有償サポートを受ける場合は12年となります。
MIRALCE LINUX 8.4及び今後出る8.Xのサポート期間は、無償利用時は2030年5月、有償サポート時は2032年5月までとなります。
次に国産ディストリビューションのため、公開情報が日本語で提供され、サポートも日本語で受けることができます。AlmaLinuxやRocky Linuxは日本語でのサポートは受けられないため、MIRACLE LINUXのこの特徴は日本での利用で特に技術サポートを必要とするような場合は大きな強みになります。
MIRACLE LINUXは、偶数番しかリリースしないという方針を取っています。このため、MIRACLE LINUX 8.4の次に公開されるバージョンはMIRACLE LINUX 8.6となります。ただし、これはインストールメディアを偶数番しか出さないというだけで、リポジトリ上には8.5相当の最新のパッケージも登録されているため、いつでも最新のパッケージにアップデート可能です。この特徴に関しては一概に良い・悪いと言いにくいですが、産業用途など頻繁にバージョンをあげるわけにはいかず、必要最低限のもののみ更新したいような用途には向いているのかもしれません。
最後にコミュニティについてですが、企業開発のディストリビューションであることから開発者コミュニティの予定は現状ないそうですが、ユーザーコミュニティが立ち上げられています(2022/4/20にMeetupイベントを開催)。ユーザーコミュニティのWEBサイトなどは近日中に公開されるそうです。RHELクローンであるため他のディストリビューションの情報を流用できることやユーザーコミュニティから提供される技術情報、サイバートラスト社の公開情報があるため、情報の収集は苦労しないでしょう。
CentOS Linuxの終了を受けて複数のRHELクローンが出現しましたが、これらは原則としてパッケージ構成などは同じのため差別化しにくく、どれか1つを選びにくい問題がありました。しかし、MIRACLE LINUXは明確な特徴があるため、これらの特徴に合うユーザーには選びやすいディストリビューションとなっています。
MIRACLE LINUXのサードパーティー対応状況について
MIRACLE LINUXは、RHELクローンの中では最後発となるため、サードパーティーの対応はこれからです。
しかし、初版(MIRACLE LINUX 8.4)の公開時点でVMware ESXiがサポートしているなど、最後発の不利をカバーする対策を取っています。また、従来の有償版MIRACLE LINUXも含めると20年以上の歴史があり日本国内の産業分野では高いシェアを持っていることから、これらに関わるサードパーティーの対応はMIRACLE LINUXに関しても進むと思われます。
※MIRACLE LINUXのサードパーティ対応情報ページ
MIRACLE LINUXの入手とインストール方法について
以降では、公式サイトで公開されているイメージのインストール方法について説明します。
ご使用されているサービスでMIRACLE LINUXが提供されている場合はもっと簡易に利用可能です。
インストールメディアのダウンロードページへは、MIRACLE LINUXの公式サイトの「ダウンロード」から行くことができます。
2022年5月時点で最新のバージョンはMIRACLE LINUX 8.4です。
ダウンロードページから「isos」→「8.4-released」→「x86_64」→「MIRACLELINUX-8.4-rtm-x86_64.iso」と辿ることで、インストールメディアをダウンロードできます。
インストール手順はRHEL 8やCentOS Linux 8などと同じです。RHEL 8や各種RHELクローンのインストール経験があれば問題なくインストールできます。
インストールが終われば、CentOS Linux 8と同様に利用することができます。
CentOS Linux 8からMIRACLE LINUXへの切り替えについて
MIRACLE LINUXも他のRHELクローンと同様に現在利用中のCentOS Linux 8の環境をMIRACLE LINUX 8.4に切り替えることが可能です。
切り替えるためのツールは、MIRACLE LINUXの公式サイトの「移行ツール」からダウンロードできます。また、ツールのマニュアルとガイドも公式サイトに公開されています。
このツールはリポジトリをMIRACLE LINUXのものに差し替えてMIRACLE LINUXパッケージをダウンロードできるようにします。
このツールは他のRHELクローンが公開している同様の切り替えツールと比べて優れている点があり、他のRHELクローンのツールは切り替え時に基本的に全てのパッケージを差替えるのに対し、MIRACLE LINUXはリポジトリ切り替えとCentOSの商標に関わる最小限のパッケージのみ行い他のパッケージの更新はユーザーの判断に任せます。
これは厳密にパッケージを管理する必要があるシステムなどでは非常にありがたい仕様で、切り替え時間も最小限で済みます。
注意点として、他のRHELクローンのツールよりインパクトが小さいとはいえ環境を変更するツールのため、本番環境の切り替え前にバックアップを取ってからご利用ください。また、切り替えについてはあくまで自己責任となります。
加えて、サードパーティー製のソフトウェアをご利用の場合は、そのソフトウェアのサポート条件や切り替えだけで利用できるかなどを事前に確認する必要がありますのでご注意ください。これは、他のRHELクローンのツールでも同様です。
このように注意する点はあるものの、終了を迎えるCentOS Linuxのユーザーが現在の環境をそのまま切り替えられ、差替えるパッケージも最小限にすることが可能なことは、MIRACLE LINUXを選択する理由の一つになります。
CentOS延長サポートについて
サイバートラスト社は、サポートが終了したCentOS Linux 8や2024年にサポートが終了するCentOS Linux 7などの延長サポートを提供しています。CentOS Linux 8からの移行に時間がかかる場合やCentOS Linux 8からどうしても移行できない場合は、延長サポートの利用も検討してみてはいかがでしょうか?
同種のサービスはAlmaLinuxを開発しているCloudLinux社など複数の会社が提供していますが、サイバートラスト社の場合は日本語でのサポートを受けられる強みがあります。
CentOS延長サポートについての詳細については、サイバートラスト社のCentOSソリューションサイトをご確認ください。
MIRACLE LINUXの総評
MIRACLE LINUXはAlmaLinuxやRocky Linuxなど他のRHELクローンと遜色がないディストリビューションでCentOS Linuxの替わりとして問題ありません。開発元も20年以上の実績があります。
MIRACLE LINUXは、特に「有償サポートを日本語で受けたい」、「CentOS Linux 8からの切り替え時の影響を最小限にしたい」などの要望がある場合は検討をお勧めします。
一方、CentOS Linuxの後継となる純粋なRHELクローンとしては最後発であるためサードパーティー製品の対応などはこれからであることや、立ち上がったばかりのユーザーコミュニティについては、これからの動向を見守りたいところです。ご利用を検討される際は、まずご自身の用途・重視している点に合っているかを判断することをお勧めします。
最後に
弊社では、パブリッククラウドのALTUS byGMOにおいてMIRACLE LINUXを提供しています。
また、他のCentOS Linuxの替わりとなるOSについても、以下のサービスで提供中です。
※AlmaLinuxは全サービス利用可能
※Rocky Linux, Oracle Linux, CentOS Streamは一部サービスで利用可能
また、高性能なサーバー管理ツールPleskについても、多くのサービスにおいてAlmaLinuxやRocky Linuxで利用可能です。ぜひご活用ください。
サポートが切れたOSは脆弱性が見つかってもパッチが提供されずセキュリティー面で危険です。CentOS Linux 8をご利用中の皆様には、なるべく早く他のディストリビューションに移行していただくようお願いいたします。